死神シリーズ



「……だな。」
「えぇ、マジかよ。しけてんな…」
月がてっぺんまで昇る夜更け。深い森の奥で二人の男が話をしている。
彼らのまわりには大勢の男達が倒れ、呻いていた。意識があるのに動かないのはきっと変な方向にまがった関節のせいだろう。
その中心にたつ二人の男は周りの光景を気にした様子もなく、眼帯をした男がもつ紙に目を向けている。
その紙には細目の男が髪の毛をつかみ、自分の腰あたりまで持ち上げている傷だらけの男の写真が写っていた。
「賞金1000万。盗賊・…C級くらいか」
「Cかぁ。呆気なかったもんな。暴れたんねぇのに…」
「能力はAA級だけどな。使いこなせてない」
そう眼帯の男が呟き、かかげた手から水を溢れせた。
手のひらからこぽこぽと湧き出るようにあふれていくその水は地面に落ち、足元に広がっていく。
そういえばこの指名手配のヤツは大量に水が出せてなかったな、と細目は思った。
眼帯の男が出した水は男を中心にして広がり、浅く広い水溜まりをつくった。
男が手を閉じると水は溢れるのをやめ、手から落ちた雫が波紋を広げていく。
「…行こっか」
「あぁ」
それを一通り見た後、細目の男が、手のひらから目を離さない眼帯の男に声をかける。
気付いた時には、空はすでに白んでいた。



「1000万だね。」
細目の男が連れてきた男と写真とを見比べ、連邦の警察は言った。
彼がつれてきたのはさきほど眼帯の男と共に倒した盗賊・ブラックウルフのリーダーだ。
能力犯罪者として指名手配を受けていたのだ。
この世界には能力者というものが居る。無機物と会話をしたり、炎を操ったりと人によりその能力はさまざまだ。
そしてその能力を悪行に利用するのが能力犯罪者である。彼らは能力を持たない人々を襲い、金品を奪い、挙句の果てには殺してしまうときもある。
そんな能力犯罪者たちをとりしまるためにできたのが連邦警察だ。
能力者を公認能力者としてやとい、指名手配されている犯罪者たちを捕まえる。
まぁ最近となっては賞金目当ての賞金稼ぎによって大半は捕まえられてしまう。
要は連邦警察とは形だけのものなのだ。
この細目の彼も、名売れの賞金稼ぎである。あの眼帯の男と共に行動し、賞金を稼いで暮らしている。いや、逃げている、といったほうが正しいだろうか。
細目の男は連邦警察官にお礼をいい、金の入った袋を受け取ると早くこの建物から出ようと足を踏み出した。そのときだ。
「死神だぁー!!」
ドアの向こう側から叫び声が響いた。
細目の男はそれを聞きつけると舌打ちをし、ドアを勢いよく開けた。
連邦警察官はわれ関せずといったような顔で椅子に座ったままだった。


「マサユキくん!」
名前を叫びながら木の幹の日陰に座り込んでいる眼帯の男を見る。
十数人の男たちが悠然と座っている彼を取り囲むようにして立っていた。
まわりの人々は彼を助けようとはせず、ただ集まって「死神だ」と言い合っていた。
細目の男はまたもや舌打ちをし、男たちの間を無理やりにくぐって眼帯の男、マサユキの隣に立った。
「ヨシヒコ。遅いじゃないか」
「うるせぇな、文句は警察に言ってくれ」
「そうか、でも助かった。一人でどうしようかと」
「そんなこと思ってもないくせに」
細目の男、ヨシヒコが吐きすてるようにそう呟くと、マサユキは笑いながら言った。
「だって俺捕まりたくねぇもん」
もんってこの人は…。
ふぅ、と細目がため息をつき、マサユキを立ち上がらせる。二人を取り囲んでいた男たちは自分たちをほっといて話を進める二人に苛立ちを感じたのか、突然二人に向かって剣を突きつけた。
「てめぇら、黙ってれば無視しやがって!!死神!お前の賞金は俺がもらう!」
二人に剣を突きつけた男が叫び、そのままの勢いで二人に切りかかる。そんな男にマサユキは軽くため息をつくと切りかかってきた男の剣をなんと素手で受け止めた。
「ちっ…『硬化』か?!」
「いや、『変化』だ。『硬化』は疲れる」
男が再び剣を振りかぶったところで今度はヨシヒコが腰にさしていた剣を引き抜き、男の首元にあてがった。
「死神を倒すなら俺を倒してからにしない?」
ふっ、とバカにしたように鼻で笑い、ヨシヒコが剣をおろす。剣を突き付けられていた男は唖然としてヨシヒコをみた。
「暴力団チキンレッズ。賞金は…900万かな」
「あぁ、また中途半端な…」
マサユキが紙の束をめくり、ヨシヒコに聞こえるように言うとヨシヒコはあからさまに嫌そうな顔をした。
その顔に気付いたのか、男はヨシヒコの胸ぐらをつかみ、叫んだ。
「チキンレッズをバカにすんじゃねぇっ!!かかれ!」
と男の言葉をきっかけにし、まわりに立ちすくんでいた男たちが動きだした。
それをみて笑みを浮かべたヨシヒコは、目の前の男に頭つきをかまし、ひるんだ隙にしゃがみこんで足を払う。
そして倒れこんだ男を無視して自分に剣をふりかざす他の男の足を回転しながら払い、その勢いで立ち上がるとさらに他の男の顔面に蹴りをたたき込んだ。
一人目に重なるようにして倒れこむ二人を踏み付けると目の前に来た男の首元に手刀を振り下ろす。
倒れかかったその男に蹴りをくらわして横に吹っ飛ばすと、死角から現われた男が剣を振りかざしているのが目に入った。すかさず自分の剣を引き抜きそれを受ける。
そしてそいつに蹴りをくらわせようとしたときだった。
「いやぁ!やめてっ!!」
叫び声にはっとしてそちらを向くと、最初に倒した男が少女を抱え、首に剣をあてているのが目に入った。さらに縋りつく少女の母親だろう女性を蹴っている。
「てめっ…っ?!」
と、そっちに気をとられている隙に鳩尾に一発ぶちこまれた。膝が折れ、地面に足をつく。ヨシヒコはくやしそうにその男をにらみつけた。
「てめぇ、その子は関係ないだろっ!」
「ふんっ、関係ねぇ!死神のせいだ!」
「死神ねぇ…」
二人のやりとりにマサユキが小さく呟く。はぁ、と大きなため息をつくと、ヨシヒコの隣に歩み寄り、男に手を差し出した。
「っ!おまえっ、変なことしやがったら殺すぞ!」
そう言って男は剣を強く持ちなおした。
「いやぁっ!!」
母親の叫びに眉間にしわをよせ、おとなしく手をおろす。それを見た男は口元に笑みを浮かべ、マサユキとヨシヒコに言い放った。
「こいつは預かる。死神!お前一人で森の奥の小屋までこい!」
そう叫ぶだけ叫び、男は少女と仲間を連れ、逃げていった。
マサユキはそれを見届けた後、道端へ倒れこんだままの少女の母親へと近づいた。
「っ…!来ないで!あんたのせいよ、死神っ…!」
しかし母親はそれを拒むように後退り、まわりの人々もマサユキの事をみて恐怖のような、憎悪のようなどちらとも言えない顔でにらんでいた。
もちろん、口々に「死神」と呟いて。
「…手を。血が出ている」
それを無視し、マサユキが母親の前にしゃがみこんだ。そして半ば無理矢理に、母親の手を掴んだ。
「離しなさいよっ!娘を返してっ…!」
「…暴れないで。傷に響くから」
マサユキの手を離そうと母親ががむしゃらに暴れる。その手が顔に当たってもマサユキは手を離そうとはせず、母親の手をじっくりと見ている。
肘から手首にかけて切り傷がある。男に蹴られたとき剣にでも触れたのだろう。それは思ったよりも浅く、マサユキはほっと息をついた。
「少し痛みますよ」
「っ…!」
マサユキが眼帯に手をのばすと母親と、まわりの人間が息を飲んだ。それを見てヨシヒコは眉をひそめる。
ずらした眼帯の下には、黄金に輝く瞳…。
「…死神っ…、」
「死神だ」
みてはいけないものを見た、とでも言うような人々を、ヨシヒコはぎろりと睨み付け、口を開いた。
「黙れ!死神なんて居るわけないだろう」
「ヨシヒコ」
「でも、」
とがめるようなマサユキの口調に、ヨシヒコは黙り込んだ。納得のいかないような顔をしているが。
マサユキはまわりの言葉など気にしていない様子で母親の傷に右手を重ねた。




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なんだかどこかで見た事のあるものになってしまったので中断です。
このコンビ好き過ぎると思う自分。