天使の話
それは運命か、はたまた偶然か。
その日俺は天使を拾った。
めったに通らない道を歩く。終電を逃し、タクシーを拾っても良かったが、今日は歩いていこうと思いこの道を一人で歩いている。
熱帯夜、という程ではないが、今日も蒸し暑い。帰ったらクーラーでもつけてシャワーを浴びて…。
「…あれ?」
ふと、目の前に人影を発見して立ち止まった。
まぁ人通りは少ない方だが人が歩いていてもおかしくない。けれどその人影は壁に体を預け、ずるずると足を引きずっているのだ。…しかも服は血まみれで。
俺は慌ててその人影に近づいて声をかけた。
「ちょっと、大丈夫ですか?!」
「っ…?!」
人影は驚いて俺を振り返り、目を見開くと何か言いたげに口を開けたが、傷が痛んだのか、顔をしかめ、そのまま倒れこんでしまった。
慌てて抱き留め、顔を覗き込む。青ざめた顔をしている男はこっちも青ざめるほど、血にまみれていた。
救急車を呼ぼうと思ったら、目を覚ましたその男に止められたので今は俺の部屋のベッドを占領している。
もちろん、血まみれだった服を脱がし、包帯をまいてある。
…あの血のほとんどは背中の傷からのものだった。まるで羽根でも生えていたみたいに、肩甲骨の辺りの皮膚がさけていたのだ。
……そういえば彼はどこにむかっていたんだろう。
「…ぅ、」
ぎし、とベッドを鳴らしながら彼が寝返りをうつ。顔をしかめたあと、ゆっくりと目が開いた。
「…あ、大丈夫?痛くない?」
「……ここは?」
「あぁ、俺の部屋…なんだけど、」
「…天界か?それとも、地界か…」
「…は?」
「は?って…。俺は…」
聞いたこともない言葉を口走る彼に、俺が声を漏らすと彼も不思議そうな声を出して顔を上げた。そして、ぎょっと目を見張る。
「…お前、羽根は?」
「…羽根?」
「そう、羽根…白き羽根か黒き羽根があるだろう?」
心底驚いた風に彼が言うが、羽根なんてもの、生えている人間のがおかしいじゃないか。
頭でもうったのかな、なんて思って彼を見るが、真剣そのものの顔はそんな状況でないことを知らせている。ならば彼は…。
「…どこから来たの?」
「あぁ?…天界に決まってるだろ」
「天界って?ここは地球でしょ」
「…天界だろ。白き羽根が住む天界と、黒き羽根が住む地界。そのほかに世界なんて…」
と、そこまで言うと彼ははっとしたように目を開き、俺の肩を掴んで興奮したように言った。
「下界か!なんでだ、なぜ俺はここにいるっ!」
「…んなこと、わかんないってっ、」
ぎゅう、と肩を掴む手に力がこめられ、爪が食い込む。俺が顔をしかめたのがわかったのか、彼は手をはずし、悪い、と言った。
「…いったい何なんだよ。背中は血まみれだし…」
「…あぁ、悪い。俺も、よく分からない。巻き込まれたんだ」
「巻き込まれた?」
何に、と言う前に彼は俺の目を見つめ、事もなげに言った。
「戦争さ」
「…戦争?」
「そう、天界と地界でのな。黒き羽根が白き羽根を殺しまくっててな。長が怒ったんだ。俺は跡取り息子様の護衛をやって…」
「?」
またもやハッとしたように目を開き、あたりを見渡した。そして今までよりも青ざめた顔になる。
「どうし…」
「ヨシヒコはっ?!」
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人間の長野さんと、天使で付き人の坂本さん。
行方不明のヨシヒコ王子を巡ってのお話。
きっと岡田君あたりがヒロシのお友達で、ごーけんが黒き羽根。
行き詰まりました。