61. 「情けない顔」
62. 「ホント楽しそうだな」
63. 「返品は不可」
64. 「こぼしてる」
65. 「くだらねーな」
66. 「嬉しいくせに」
67. 「理不尽だよ!」
がさがさと何かをあさる音で目が覚めた。
広い家だから他の部屋の音はあんまり聞こえないはずなんだけど、俺は普通の人
間じゃないから遠くの小さな音でもばっちり聞こえる。
時計をみたら朝6時。いくら夜行性じゃないからって吸血鬼には早すぎるんじゃな
いか?
その迷惑な音を出しているはずの同居人を思い浮かべ、俺は大きくため息をつい
た。
「ない…ない…」
真っ白いコンロに冷蔵庫、壁も真っ白に統一されたキッチンで長野は血眼になっ
て捜し物をしていた。
白の血族で、さらに白薔薇の跡取りとされている、吸血鬼の世界の中でも地位の
高い位置にいるはずの長野。
そんな長野が捜し物をはじめたのはつい30分前。
別にそれほど早く起きる予定ではなかったのだが、昨晩早めに床についたために
目が覚めてしまったのだった。
「…長野くん?何、してるの?」
ぴく、と突然かけられた声に長野が反応する。
「…ねぇ健。俺のだいっじなラーメンしらない?」
「…は?ラーメン?」
ぐるうり、ゆっくりした動作で恨めしそうに同居人・健を見つめる。…というか
にらむ。
「…カップラーメン?」
「違う!俺の大事なインスタントのもっこ●亭の醤油とんこつが一つ無い!」
「っ?!」
ガバッと立ち上がった長野が叫ぶと、突然健の体が動かなくなる。
ハッとして健が長野へ視線をむけると、先程まで茶色に色付いていたはずの瞳が
真っ赤に輝いていた。
白の血族が得意とする「物体操作」だ。
白薔薇跡取りの付き人である健でさえ操作できるのは物質だけであり、人間など
意志を持ったものを操れるのは現白薔薇と、長野の二人だけなのだ。
ぴくりとも動かなくなった手足と、静かな笑みを浮かべて近づいてくる長野に恐
怖を感じる健。
ひたり、と首に触れた長野の手が冷たくて、けれど冷や汗がだらだらとあふれて
。
冷ややかな長野の笑みが恐い。
ていうか、オレ喰ってねぇし。理不尽だよ!
「ねぇ、食べちゃったのかなぁ、健ちゃあん。俺のだいっじなラーメン」
首に少しばかり食い込む指が痛い。
長野の笑顔と、手にもたれたラーメンどんぶりを目にうつしたまま、健の意識は
ブラックアウトした。
68. 「そんな役回りだね」
69. 「あの人に聞こうよ」
70. 「さっすが、俺!」
71. 「眠ってるんだろ?」
72. 「マジですとも・・・」