49. 「プレゼント?」
50. 「少し黙れ」
頬を伝う血が痛々しい。荒く繰り返す息も聞いているこっちが苦しくなる。
目の前に立つ俺の主人は苦しそうに背中を丸め、それでもなお前方の敵に剣の切っ先を向けている。
後ろで尻餅をついている。少し、自分が情けなくなった。
「ジュン、」
「ゴウ君大丈夫…?」
自分の傷も厭わずに俺を振り向くジュンイチ。バカじゃねぇの?お前…。
「…俺は、」
大丈夫だ、と言えずに目を見開く。振り向いたジュンイチの背後に居たはずのモンスターが居ないのだ。
「ジュンッ…!!」
「え?」
ザシュッ
「っぅ…、」
腕に一筋熱が走る。
大げさな音のわりには傷が深くないことを確認し、目の前で自分のつめについた俺の血を舐めとっているモンスターをにらみ付ける。
後ろのほうでジュンイチが何か言った気がしたが、そんなものは聞こえない。
ただジュンイチを傷つけようとしたそいつが憎くて、ただむかついて、俺はジュンイチの制止も聞かずに右手の指を鳴らした。
パチン
「っ…ゴウくん!」
ジュンイチの叫び声と共にゴォオオと響く音が耳につく。
俺の目の前には真っ赤な炎につつまれて燃えるモンスター。なにやら不快な叫び声を発しているが、俺はそれどころじゃない。
くらりとたちくらみに倒れこみそうになるが、ジュンイチに支えられて地面に再び倒れこむことだけは免れた。
「ゴウくん!能力は使ったらあかん言うたやろ!」
うるさいよお前、少し黙れ。助かったんだからいいだろ。
「炎の精霊は生命力を燃やして火を作るて…そんなので守られても嬉しくない!」
ドォンと地面が響き、燃え尽きて黒焦げになったモンスターが地に落ちた。
俺は安心からジュンイチに体を預け、目をとじた。
「…お前を守れるなら俺は死んでもいい」
「…ゴウくん」
泣くなよジュン。死ぬわけでもねぇし。
それは本音なんだから。
51. 「威厳が全くない」
52. 「よくあることです」
53. 「そこは聞き流せよ」
54. 「言わなきゃよかった・・・」
55. 「俺の立場は?」
56. 「たまにはね」
57. 「謎だらけなんだもん」
58. 「あとにしろよ」
59. 「ご自由にどうぞ」
ガキンッと刃物がぶつかり合う音が響く。
大勢の盗賊に囲まれ応戦している青年・ヨシヒコはそのあまりの人数の多さにため息をついた。
その間にも盗賊たちはヨシヒコのことを殺そうと刃を振るう。
が、大きな人数差にも関わらずヨシヒコは無傷だった。不利になるどころか優勢である。
「なんなんだコイツは?!」
盗賊の一人がつぶやく。そいつの剣を自らの剣で受け止め、吐き捨てるようにいった。
「腹が減って死にそうな剣士だよっ!!」
ガバッと剣を振り上げ、相手を吹き飛ばす。そして苛立った様子で空を仰ぎ、声を張り上げた。
「マサユキ!!さっさとこいつら吹き飛ばせ!!」
「はぁ?お前、誰に言って…まさかっ?!」
ダンッ!と地面が鳴り響き、何者かがヨシヒコのそばにおりたった。
つり目を戸惑う盗賊たちに向け、満面の笑みでヨシヒコに答える。
「暴れていいのか?ヨシヒコッ」
「ご自由にどうぞ」
心底嬉しそうな声をだし、彼・マサユキがパチンと指を鳴らすと足元から風が巻き上がった。
「なにっ…!!」
「ヨシヒコが傷つくと困るんだよなぁ」
「おまっ!精霊使いかっ!」
盗賊の一人が驚いてヨシヒコを指差す。そんな男を気に食わないと言った様子でにらみ、マサユキが腕を振り上げる。
「んなことどうでもいいんだよ。吹き飛べ」
ゴォォォ、とヨシヒコとマサユキを中心にして風が起こり、二人を囲む盗賊を次々に吹き飛ばしていった。
スッ、と風が止むと二人以外は地面に伏せっていて、マサユキは満足そうに笑んだ。
「完璧」
「はいはい。…はぁ、疲れた」
「自分でやるっていったじゃん」
「予想外に多かったんだよ」
マサユキの言葉にムスっとしてヨシヒコは返す。
そんなヨシヒコをみてマサユキは微笑み、舞うようにして歩き出した。
ふわふわと踊る髪の毛とマサユキをみつめ、ヨシヒコは満足そうに微笑んだ。
60. 「くすぐったいってば!」