13. 「傍から見てるほうが楽しいし」
14. 「あいつの場合は違うだろ」
15. 「なんか侘(わび)しいねえ」
16. 「勘弁してくれよ」
17. 「それ本気で言ってるの?」
18. 「寂しがり屋だもんね」
19. 「変な言い方するなよ」
20. 「大切にして」
21. 「なんだ、こいつ」
契約前の精霊は心がきれいな人しか見えないとか言うから、多分俺には見えないだろう。
けれど、自分に足りない何かを求めて歩く俺は、きっとあんたを探していたんだと思う。
きっと。
「…おにーさん、疲れとるな」
不意に背後からかけられた声。
振り返ることもできず、その声の主が近づいてくるのをただじっと待っていた。
誰かが俺を待ってる、なんて。今時「白馬の王子様がー」みたいな事を言う俺に喧嘩をふっかけてくるバカが居た。
そのバカをこてんぱんにのした次の日、つまり今日。
ヤツは仲間を連れて仕返しに来た。
始めは有利だったものの、いかんせん数が違いすぎた。
背後からけ飛ばされ、地面にふせた途端ぼっこぼこ。
気がすんだ奴らに解放された頃には、傷だらけになっていた。
同居している男を心配させたくなかったので、とりあえず汚れだけでも落とそうと湖に来た所で力つきた。
木に寄りかかり、目を瞑った時、声が聞こえた。
近づいてきたそいつは俺の隣にしゃがみこみ、顔を覗いてくる。
「…顔、痛そうやね。喧嘩でもしたんか」
「…」
柔らかく微笑むそいつにぶすっとした顔で返す。
なんだ、こいつ。
至る所が痛すぎて喋れないし動けない。
情けないな俺。
「口も聞けんの?痛いから?元から?」
大丈夫?と不安げな顔をするそいつは俺の顔に手を伸ばしかけ、動きを止めた。
「…どうなんやろ、僕の力でやれるかな」
ぽつり、と小さな呟き声。
おいおい…とどめでもさしにきたのか?
俺の顔色をうかがったあと、そいつは俺の腫れた頬に手をあてた。
「…って!」
触れた瞬間はズキッとした痛みに体が跳ねたが、段々触れたままでいる冷たい手が心地よくなってきた。
痛みはとれないけれど、段々和らいでくるそれに、じいっとそいつを見つめてしまう。
「んん、完璧」
俺の顔をみて、ふわりと微笑む。
何が完璧だって?
「やっぱり思った通り。おにーさんキレイな顔やね。さっきは腫れてて悲惨やったけど」
さっき…さっき?
そんなすぐに顔の腫れがとれる訳ないだろう。
現に今だってずきずきと体中が痛む。
俺が黙り込んでいると、そいつは不思議そうな顔でのぞき込んでくる。
そしてしばらく見つめ合った後、大げさにため息をついた。
「痛みはとれてないんやね…。やっぱり半人前や」
寂しそうに呟くそいつの顔を見て、なぜだか心臓が高鳴る。
なんでだ?
なんで、
「おい!居たぞ!」
がさがさと草をかき分ける音がしたと思えば、さきほど俺がまいてきた連中の一人がそこに立っていた。
しかも仲間を呼ぶために大声を出して。
きっと、俺にとどめをさしにきたんだろう。
とにかく俺の傷を癒してくれたそいつを巻き込むのが嫌で、無理矢理体を起こそうとすると、柔らかい笑みでさえぎられてしまった。
その間に男が呼んだ仲間が集まり始めていて、逃げる間もなく囲まれてしまった。
「ちっ…」
こりゃあほんとにやばいかもな…。
「おい、そこのにいちゃんよう。殺されたくなかったらそいつ置いてさっさと逃げな!」
男が手に握りしめたナイフを振りかざし、叫ぶ。
そのまま脅してくれれば彼は逃げるだろうか。
…いや、たぶん逃げない気がする。
「うーん。殺されたくはないけど、このおにーさん殺されるのも困る。…どうしよか?」
にっこりと。笑みを浮かべたまま、そいつは言ってのけた。
こんな優男に抵抗されようと何も怖いものは無いだろう。
男達はにやにやと嫌な笑みを浮かべ、言う。
「別に俺らは一人殺そうが二人殺そうがかまわんけどなぁ!やれっ!」
男のかけ声と共に周りのやつらが駆け出す。
それを認め、隣にいるそいつは立ち上がり俺の前に立ちふさがる。
…やめろ
「…僕が死んでもまだ大丈夫やから」
ちらり、とこちらを振り向いて笑う。
ふざけるな…!
「おにーさんだけでも助かれば僕はかまわない」
奴らのもったナイフが彼に振り下ろされる。
やめてくれ!
「っざけんな!!シゲルっ!」
そのときだった。
ザッバァアアン!
突然の出来事に思わず目を見開く。
彼にナイフが刺さろうとした瞬間、湖から、いや…湖が、男達に襲いかかった。
津波のようなそれに、男達は耐えられるわけもなく、何かを叫びながら流されていった。
彼はそれに視線をむけて立ち尽くしていた。
背中を向けていたので顔は見えなかったが、きっと俺と同じ顔をしているんじゃないだろうか。
「…おい」
無事か、と問いかける。
体はまだ動かない。声を出すのもまだつらい。
「…名前」
「…あぁ?」
「それが、僕の名前?」
少しふるえた様な声が聞こえた。
名前、て…。
「…シゲル?」
「ん、」
「…シゲル」
「うん」
「シゲ」
「…うん」
「…どういうことだ?」
「おい」
空気を読まない俺の言葉に、シゲルがぐるりと振り返る。
心底あきれたような顔だったが、じゃっかん喜んでるようにも見える。
「なんや自分。精霊のこと知らんのかい」
「…精霊って、心がキレイな奴にしか見えないんじゃないのか」
俺のことはとりあえず置いといて、あいつらの心がキレイだとは思わない。
するとシゲルは苦笑しながら俺に近づいてきた。
「それは迷信。精霊の名前を知ってるのは主人だけってのはマジやけどな」
目の前でしゃがみこみ、俺の頬に触れる。
「名前を呼ばれることで契約は成立する」
触れられた部分がほんわかと暖かい。
「そいで、本当の力を手に入れるのもそのとき」
「…だから怪我も治るってか」
無くなった痛みに納得し、シゲルを見つめる。
にっこりと笑うそいつの腕を引き寄せ、強く抱きしめた。
「…やっと、見つけた」
「ん…ずっと待ってたんよ、タツヤ」
抱きしめ返してくるそいつが本当に大事に思えて、なぜか目頭が熱くなった。
ずっと探し続けていた「白馬の王子様」は、少し頼りない湖の精霊だった。
22. 「ギャーッ」
それは昼食をとっているときだった。
俺の目の前に座っている主人のマサヒロがふと顔をあげて動きをとめた。
持っているフォークにはサラダのトマトが刺さっていて、口にはレタスとかがいっぱいつまったまま、だ。情けない・・・。
「…マサヒロ。きったない」
「え?あ、うん…」
俺が一言言ってやると、思い出したように口を動かし始める。けれどその顔は何かがひっかかっているように曇っていて、俺がきになってしまう・・・。
「なんかあんの?」
別に食べるわけじゃないけどフォークを目の前のパスタに絡ませては解く。
今度は俺の言葉に反応しなかったマサヒロの脛をゴンっと音がするほど蹴ってやると、相手は声もあげずにうずくまった。
「で、なんかあんの?」
「タイチくん!蹴んなくたっていいでしょーがっ!」
少し涙目になっているのを見るとちょっと可愛そうだったかな、なんて思うけどその辺は気にしないでおこう。
マサヒロの皿からレタスを失敬して、口にふくむ。バリバリと音をたてて口を動かしているとやっと復活したマサヒロが口を開いた。
「…タイチ君見つけた時さ、呼ばれたから迎えに来たって言ったじゃん?」
「…ああ」
そういえばそんなこともあったな。顎に手をあてて肘をつく。マサヒロを見るとうつむいてサラダを突っついていた。
「…精霊には運命で決まった主人が居るって言ってたよね?」
「あぁ、たった一人のな。お前もわかってんだろ?」
「そう…なんだけどね」
うーん、とうなってマサヒロは再び黙り込む。少し見守っていたけど、あまりにも沈黙が長いので再び脛を蹴り飛ばしてやる。
「っ〜…!!いちいち蹴るなよっ!」
「だったら早く言えって」
「…なんか、また呼ばれてるんだよ」
「はぁ?」
「早く助けてって・・・」
自分を見下ろす大柄な男を見上げて彼は首を傾げた。
誰かを探しに行かなきゃという衝動に駆られて森から出てきたのはいいが、たどり着いた街は見知らぬものばかり。
何も出来ずに立ちすくむ彼を助けたのは目の前にいる大柄な男で。
彼は男が言う言葉の意味がわからずにしきりに首を傾げた。
「お前精霊だろ?俺が主人になってやる。力を貸せ!!」
「力・・・」
その言葉に彼は反応を示し、手のひらを上に向けて広げる。
それをぎゅっと握りしめると、ズンと大きく響いた音がして近くの地面が盛り上がった。
一mほどの山が出来上がると彼は男を見て満面の笑みを浮かべる。
男は山を見て不敵な笑みを浮かべた。
「で?どこから聞こえるとかわかんの?」
昼食を終え、宿屋の部屋に戻ったタイチはベッドの上で唸っているマサヒロに目を向けた。
タイチくんが居るのになぜだ、と嘆いているマサヒロは見ていておもしろかったが、長時間もこんな姿を見せられては飽きる。
タイチはため息をついてベッドの端に腰を下ろし、マサヒロの額をベチンと叩いた。
「ってぇ・・・」
「しつこい。気になるなら確認しにいきゃあいいじゃねぇかよ」
「・・・そんなに簡単にいわないでよ。どこに居るかもわかんないのに・・・」
はぁあ、と二人で盛大にため息をつく。タイチは再びマサヒロの額を叩き、同じように仰向けに寝転んだ。
「・・・俺のことどうやって見つけたんだよ。」
「・・・だってすげぇ呼ぶんだもん。ここに居るから、早くって・・・。今回は違うんだよ。」
何かに助けを求めるように天井へと手を伸ばし、マサヒロが呟く。
『俺を止めて』
ゴゴゴゴ・・・と腹に響くほどの地鳴り。
それとほぼ同時に建物が・・・地面がゆれだした。
「地震っ…?!」
がばっと勢いよく体を起こし、タイチが呟く。
マサヒロは天井を見つめたまま揺れに身をまかせていた。何かを信じられないといった顔で。
「マサヒロ?」
タイチがクッションを頭に乗せながらマサヒロを呼ぶ。
その声にはっとして顔を上げたマサヒロは今にも泣きそうな顔でタイチにすがりつく。
「タイチくんっ…早く、助けなきゃ…」
ゴゴゴゴ・・・と腹に響くほどの地鳴り。
それとほぼ同時に建物が・・・地面がゆれだした。
彼は隣に立つ男を見つめ、にっこりと微笑む。
男は口端を持ち上げてニヤリと笑うと彼に見向きもせずに手を高く掲げた。
「この力が俺のものになったのか…!!はははっ!!この力がっ!」
徐々に地震がおさまってくる。彼は嬉しそうに笑う男を見てさらに笑み、心の中で叫ぶ何かに気づかない振りをした。
男のまわりにはたくさんの手下たちがいて、盗みをするタイミングを見計らっている。
彼があたりを見渡すといくつかの建物が音をたてて崩れていくのが目に入った。屋根が崩れ落ち、壁が倒れ、見るも無残な姿になった建物をみても彼はなんとも思わなかった。
二人の隣を何人かの人々が逃げていく。男はその様子を見て満足そうに笑い、彼は男の顔を見ていた為に人々には気づかなかった。いや、気づかなかったふりをした。
ズキン。と心が痛む。俺は何をしている?誰か、俺を・・・。
「止めてやるっつーの」
「誰だっ?!」
突然聞こえた声に男が振り返る。多数の部下たちも声の主を見極めようと振り返り、二人の男を目にすることが出来た。
一人は長身、一人は小柄な男。マサヒロとタイチだ。
「はっ、お前ら精霊使いである俺様に適うと思ってるのか?!オイお前!あいつらを倒せ!」
男が二人を指差し、彼にむかって叫ぶ。彼はその声に反応してマサヒロとタイチを見つめ、そして手を差し出した。
「…俺は、主人を守る…」
そしてグッと拳を握りこむ。それと同時に二人の足元が大きく揺れだし、危険を察知した二人は横へと飛んだ。
ゴォンと音をたて今二人が立っていた地面が一瞬で空高く持ち上がり、また盛大な音をたてて崩れた。
「うわ、あっぶねぇ!」
「うわー、大地の精霊かよ。俺愛称性悪いなっ」
マサヒロとタイチが思い思いに呟き飛び出した勢いのまま男と彼にむかって走っていく。
マサヒロの手にはいつのまにか細身の剣が握られている。護拳のついたレイピアだ。
タイチは何mか先の男に彼と同じようにして手をむけ、にやりと笑んだ。
「精霊はそいつだけじゃねぇんだよなー」
「なにっ?!まさかお前もっ…ぎゃぁああ!!」
男が言い終わらないうちに男の全身に電撃が走る。タイチはその様子をみて鼻で笑い、崩れ落ちる男をそのままに後ろにひかえる手下たちにむかって突っ込んでいった。
「ぎゃぁっ!」
「うわぁあ!」
それぞれに叫び声をあげて倒れこんでいく。倒れた彼らは帯電しているようで、ときおりバチバチと音をたてていた。
一瞬にして倒れこんだ男たちをみて彼は慌てて男のもとに駆け寄ろうとする。が、マサヒロがそれを許さなかった。
剣を彼の喉元にむけ、それ以上動くのを阻止する。
「動くな。死んじゃあいねぇから安心しな。俺は聞きたいことがある」
「…聞きたいこと?」
マサヒロが見つめると、彼がおとなしくなった。
何かを確かめるようにマサヒロを見つめ、そして顔をしかめる。
「…おれ、は…」
「お前は、っ?!」
ガキン、と刃物がぶつかり合う。マサヒロが発しようとした言葉を遮るように大振りの剣が二人の間に振り下ろされたのだ。
「マサヒロ!」
とっさの判断でそれを剣で受け止めたマサヒロだったが、その隙に彼が手をグッと握りこんだ。
「ぅぁあっ?!」
ドオォンと大きな音が耳に響く。かわす暇もなく、というより気づき間もなくマサヒロが盛り上がった地面によって吹き飛ばされた。
ドサッと地面に落ちるマサヒロをみて、二人の間に割り込んできた、タイチに倒されたはずの男が高く笑う。
タイチは倒れこんだマサヒロのそばにかけより、男と彼をにらみつけた。
「ちっ、タフなヤツ」
「俺は、主人を守るんだ…」
彼が自分に言い聞かせるようにして呟く。その顔は少し青ざめていて、何かにおびえているようだった。
「…苦しいって、」
「あ?」
「苦しいって言ってる…」
マサヒロが痛む体をおさえて体を起こす。太一はそれを支えてやりながらマサヒロは口を開くのを待つ。
敵意剥き出しでこちらに剣をむける男と、おびえた様子でこちらをむいている彼。
マサヒロは彼だけを見つめて手を伸ばした。
「あいつを、俺が助けなきゃ。あいつの主人は俺なのに…」
「…あぁ」
タイチがつられて彼を見る。同じ精霊として、なぜか救ってやらなければと思った。
「この役立たずがっ!!」
「ひっ…!!」
ガッと彼の頭を男が殴る。彼は呆然とした顔で男を見つめ、それをみた男がまた彼の頭を殴った。
「やめ、やめて…」
「やめてほしいならあいつらを倒せ!俺の敵だ!」
男が指差す二人を、彼がちらりと見る。
早く、早く倒さなければ…。
男に開放された彼は、とっさに手を二人に向けた。
理由がわからない震えに戸惑いながらも彼はグッと拳を握り締めた…はずだった。
「っあ?!」
バチッと痛みが走り、思わず座り込む。
彼が二人を見るとそこに姿はなく、代わりに男の叫び声が聞こえた。
慌てて振り返るが、男の首にはすでにタイチによってナイフがあてがわれ、彼のすぐそばにはマサヒロがたっていた。
「な、に…」
「あー動くなよ。またバチっとやっちゃうぜ、俺」
彼が驚いて身じろぐと、タイチが仕方なしに言う。彼に向けて伸ばした手にはバチバチと電気が帯びていた。
さきほど手に走った衝撃はこれか、と彼は密かに思う。
「おいっ…!早く俺を助けろ!」
「はいはいはーい。おっさんは俺が相手になるからさ」
必死になって叫ぶ男をタイチが軽く流す。
主人のピンチに本来なら助けにいかなければならないはずなのだが、彼はそれどころではなかった。
目の前にたつマサヒロから目が離せないのだ。
ただ見つめられているだけなのに体が動かない。
そしてなぜか懐かしい気持ちになった。
早く、早く倒さなければいけないのに、なぜか体が動かなかった。
「…あんたは、」
「……」
彼が何か呟こうとしているのを手を差し出して制し、マサヒロが言う。
「お前の主人はあいつじゃない。俺だ」
マサヒロの言葉を聞いて彼はなぜだか落ち着いた気分になった。
今まであんなにも心が落ち着かなかったのに、今ではさきほどの気持ちが嘘のようだった。
ただマサヒロを見つめ、次の言葉を待つ。
マサヒロは彼の様子を見てニッと笑み、言った。
「お前の主人は俺だ。トモヤ」
その一言で、彼・トモヤは暖かい風が体の中を吹き抜けていく感覚を感じた。
そしてほろりと、涙がこぼれる。
「見つけた…俺の、」
見つめあう二人をみて男は舌打ちをした。二人は聞こえていないようだったが、そばにいたタイチはそれを聞いてニヤリと笑った。
「バーカっ。精霊が主人を選ぶんじゃねぇよ。すでにもう繋がってんだ。お前みてぇな心がきったねぇヤツに従う精霊なんかいねぇよ」
早く消えろ、と叫んだついでに小さな雷もおまけして、男を突き飛ばす。
男はちくしょうと叫びながら走り去り、タイチはそれを見ることもなく二人に近づいてトモヤの頭を殴った。
「てぇっ?!」
素っ頓狂な声をあげるトモヤの前にたち、ずびっと指をさして言う。
「お前も、自分の主人か主人じゃないかくらいわかるだろ?…おかげで大惨事だ。」
大惨事、という言葉にトモヤがぴくりと反応を示す。あたりを見渡すと崩れた建物が目にはいり、悲痛な気分になる。
そして今にも泣きそうな顔でマサヒロにしがみついた。
「俺、まだ生まれたばっかりで…、主人とか、よくわかんねぇし、探さなきゃいけない人が居ると思ったから山を降りてきただけで…この人こえぇ…」
ぐすぐすと泣きじゃくる姿はまるで三歳児だ。タイチはあきれたようにため息をつき、マサヒロは苦笑してみせた。
「俺もこいつの精霊なんだよっ!お前の先輩!タイチな!タイチ!さっさと力使って建物直せ!」
バシっと再び頭を叩く。トモヤはタイチを見ることもせず、マサヒロに抱きついたままだった。
それをみてタイチはイライラとし始め、さらに頭を小突いていく。
「だぁあ!うぜぇ!」
「た、タイチくん…」
いっこうに止むことのないタイチのど突きにマサヒロはいよいよトモヤが可愛そうになり、止めてくれとでも言うようにタイチに笑って見せた。
「…むかつく」
「ギャーッ」
タイチの小さな呟きとともにマサヒロの体に電撃が走る。
トモヤはそれに驚いて体を離し、犯人であろうタイチをにらみつけた。
「俺の主人にっ…!!」
「あぁ?俺の主人でもあるんだよっ!」
バチバチと火花が飛びそうなほどにらみ合う二人。
今にも能力を発しそうなトモヤと、必死なトモヤを見てにやにやと笑うタイチ。
しびれる体を横たえながら、先が思いやられるな、とマサヒロは笑った。
23. 「もう終わったのか?」
24. 「おっ、新記録か」